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24/11/23
ジビエとは?猟師たちのこだわりで旨いお肉を提供できています
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ジビエってそもそも何?
オッタントットではジビエ料理を提供しています。「ジビエ」はフランス語で、フランスを中心としたヨーロッパ文化と考えていいのかなと思っています。
狩猟、要は狩りですよね。銃を使ったりとか、罠を使ったりとか、時には網を使ったりとか、色んな手法があるんですけども、その狩猟によって捕らえられた野生動物の肉、ということになります。 野生動物なので鳥も含まれるし、四つ足の動物も含まれます。
鹿や猪が一般的ですが、鳥で言うと鴨とか、 フランス料理ではキジバトやホロホロ鳥なんかも使われます。ちょっとマニアックになると、穴熊やハクビシン、ヒグマ、ツキノワグマ、そういった動物も食べることがあります。
ヨーロッパの文化なんですけども、日本でも最近注目されているんですよね。 肌感ではここ10年ぐらいっていう感じですかね。「ふくおかジビエフェア」も「全国ジビエフェア」も今まさにやっている真っ最中で、オッタントットもふくおかジビエフェアに参加しています。そうやって自治体も頑張って普及を試みているところです。
ジビエが注目される理由① 獣害
なぜ日本で注目されてるか、大きく3つの視点があるかなと思っています。1つは農作物の獣害ですね。鹿だったり猪だったりが農作物を荒らしていることに対しての対策です。
農作物の獣害の被害額がどれだけあったかっていうデータが出てるんですけども、令和4年度が156億円という数字が出ています。もう、とんでもない数字ですよね。その内訳は鹿が65億、猪が36億ということで、鹿と猪で6割の被害を出しているわけなんです。そういうこともあって、積極的に獲って駆除していきましょうという流れになっています。
実際どれぐらい処理されているのかもデータを調べてみました。平成28年度で年間1,283トンの猪なりのジビエが処理場において処理されていました。令和4年度になると2,085トンということなので、800トンぐらい増えてますよね。6年間で800トンは1.5倍以上ですから、かなり増えてます。
処理頭数で言うと右肩上がりで増えてきているっていう感じですが、ちょっと例外がありまして。令和元年度が2,008トンなのに対して令和2年度は1,810トンで、200トンぐらい減っています。
令和2年といえばコロナなんです。コロナ禍によって飲食店需要が減ったという考えが妥当なのかなと思います。その後はまた順当に増えていっています。
これだけの処理頭数がある中で食用となっている割合というのがあります。平成28年度、1,283トン処理したうちの85%が食用でした。12%がペットフードです。ペットフードとしても結構注目されていて、鹿とか猪とかの肉を薄切りにして、乾燥させて、ペット用のジャーキーとして販売されています。
ちなみに令和4年度は2,085トン中、70%が食用で25%がペットフード用となっていて、ペットフード用もかなり需要が増えてきています。飼い主さんたちも注目しているみたいですね。
ジビエの処理施設は認可制になっていて、衛生的に処理できる施設なのかを審査されて、その自治体の認可が下りないと運営できません。処理施設は日本全国に750ヶ所あって、これも増えてきているようです。
ジビエが注目される理由② SDGs
2つ目の視点はSDGsの観点からですね。もう今は何ごともSDGsということで、特に大きな企業さんなんかだと何かしらSDGsの取り組みをしていないと、投資家からお金が集まらないとかいったことになってしまっているんですよね。
どういう風にSDGsに即してるのかというと、例えば地産地消。篠栗町の山で獲ったジビエが篠栗町のオッタントットで消費される。ということは、輸送コストがかからないんです。福岡から大阪とかに運ぼうと思ったら大体はトラックですよね。ガソリンを使ってCO2などの温室効果ガスが出て環境負荷がかかる。それを地産地消にすることによって、環境負荷がかからないよっていうことらしいです。
あとは、地域経済の活性化もあると言われています。ジビエを売りにして町おこしとか、猟師さんの新たな収入源にしましょうというものです。
そもそも害獣として廃棄されるものを食材として活用すること自体エコですし、革製品にすることも最近増えています。そういった活用で廃棄せずに済むよっていうことなんですね。
ただこれらの話がすべてではなくて、例えば地産地消にしても、できる体制が整っていない場合もありますし、こだわりのレストランだと、北海道からエゾシカを仕入れるとか、県外の有名な猟師さんが獲った鹿を仕入れるとか、完全に地産地消ばかりではないです。
猟師の新たな収入源と言っても、現状ではなかなか専業で食べていけるほどは多分稼げないと思いますし。処理施設も全国750ヶ所あるとは言いましたが、この中で黒字経営ができてるところもかなり少ないらしいんですよね。なので両手放しで収入源になりますと言うのも浅はかかなと思います。
地域経済の活性化と言っても、ジビエで町おこしが実際成功しているという話も僕はあんまり聞いたことがなくて。僕が知らないだけであるのかもしれないですけど、あったとしても一握りなのではないかと。
だからもっとね、色んな課題を解決していかないと、本当のSDGsには繋がっていかないんだろうなとは思っていますね。まだまだ課題だらけです。
ジビエが注目される理由③ ヘルシー
3つ目は食材としてヘルシーであるということです。ここ最近のヘルシー志向の流れと合致していって、注目されていると感じています。
ヘルシーな食材であるということに関しては、もう間違いないところです。やっぱりね、山を駆け回っていますから、脂肪分は割と少なめで筋肉質なんです。低脂肪、高タンパクなお肉になっているということですね。タンパク質がたくさんあるので、それを食べると人間の体の成長を支えたり、体の修復の助けになったりするわけです。
体を作るのがタンパク質ですから。爪も髪の毛もお肌もタンパク質でしょ。なので、タンパク質を摂ると体が若々しくなると言っても過言ではないんじゃなかろうかと僕は思っているところですね。
低脂肪という点、鹿で言うと脂質は牛肉の50%程度と言われています。同じ100gの牛肉を食べるのと鹿肉を食べるのでは、鹿肉の方が50%脂質がカットされるということです。そして、ビタミン、ミネラル、鉄分、特にビタミンB群やオメガ3、こういったものが豊富です。
オメガ3に関しては鹿とか草食動物の方が特に豊富です。猪は割と肉食というか雑食というか、山でもどんぐりとかの木の実を食べたりしてて、鹿は葉っぱを食べるので、その辺がちょっと違います。
オメガ3は中性脂肪を減らしてくれることで有名です。血圧が低下して、血がサラサラになる。動脈硬化や心疾患、脳卒中、そういった病気の予防効果があるんじゃないかと言われていますね。抗炎症作用もあるのでリウマチとかにいいそうです。
脳神経系もよいらしく、アルツハイマーがちょっと改善するんじゃないかとか、記憶力向上、学習能力アップとかね。うつ病や不安症、そういったものにも効果があるのではないかという風に言われています。
猟師2人にこだわりを聞いてみた
オッタントットでのジビエの提供は、3~4年前ぐらいに篠栗町でジビエを獲っている人がいるという情報が回ってきて、その方、林くんとお会いしたのが始まりです。
林くんは株式会社tracks(トラックス)という猟師の会社に所属されています。今は移動になって大分県日田市の施設長をされているので林くんは篠栗では獲っていないのですが、トラックスからの仕入れは続けています。
もう1軒仕入れているのは、ふくおかジビエフェアに参加した年に割と中心になって動かれていた、西村くんという方が所属している株式会社糸島ジビエ研究所です。
オッタントットのジビエはこの2社から仕入れていて、そこの林くん、西村くんに狩猟や処理の際のこだわりを聞きました。
まずはトラックスの林くんのこだわりです。彼は基本的に罠で獲ります。くくり罠っていうのかな、足をカツンとロックする罠ですね。その罠にかかった鹿をその日の午前中のうちに処理するそうです。
罠にかかったままの状態だとやっぱり暴れますし、長時間かなりのストレスがかかると肉質が悪くなってくるので、1時間以内に処理場に行くこだわりを持っているとのこと。もちろん認可処理場です。
熟練の職人が血抜きを行って、獲ったジビエは全頭検食されています。つまりすべての個体を食べてみて、問題がなければ出荷というプロセスです。これはちょっと出せないなという判断をすると出荷しないそうです。
糸島ジビエ研究所の西村くんは〆方にかなりこだわりを持っていて、眠り〆という方法を採用しています。獲った後、脳神経の一部を切って、心肺機能は活動を維持した眠った状態にします。
その眠った状態の時に、罠にかかって暴れたりストレスがかかった疲労が回復して、筋肉に溜まった乳酸や老廃物が除去される。暴れて消費したグリコーゲンやアミノ酸、こういったものもまた血液から補充されて、すごくいい状態の肉質に戻してから〆るというものです。
熟成の伸びという表現をされていたのですが、お肉を熟成させる時、そのお肉の状態によって3日で熟成が止まる場合もあれば、1ヶ月熟成を続ける場合もあるそうで。これは個体差や衛生管理などでも変わるらしいですが、眠り〆を行うと熟成の伸びが長くなると。肉質も、美味しい期間や見た目にも美しい期間が長くなるそうです。
低温の冷蔵庫みたいな場所で眠らせているので、体温が下がって脂肪の酸化が抑えられて、脂も美味しくなるようです。
ジビエは山で良質な餌を食べて、いい運動をして、体が仕上がってる状態だから、本来美味しいものなのだと西村くんは言っていました。その本来美味しいものの質を悪くせずに、料理人や食べるお客さんに繋いでいくということをすごく意識して、肉の保存、衛生管理、柔らかさや旨味を出す方法、熟成など、試行錯誤しながら頑張っているとのことでした。
ジビエを広める一翼を担いたい
ふくおかジビエフェアなどの目的は一般市民へのジビエの普及、 より一般的に広く流通させたいという思いなんですけど、これがなかなか難しくて。やっぱり流通量がそもそも少ないんですよね。猟師が少ないことや高齢化もあります。
でも林くんや西村くんのような若い猟師がこだわって面白い取り組みとかをしてたりするので、こういうのはすごく期待が持てるなと思っています。
処理場を作るハードルも高くて。しっかり衛生管理ができる施設を作らないといけないので、けっこう資金が必要なんですよね。その資金をどう捻出していくのかが若い猟師さんたちに求められているし、自治体や地域住民の協力なども必要になります。
あとは一般の人たちの先入観ですね。オッタントットのお客様でも、ジビエを食べたことのない方のほぼ100%がジビエって臭いんですよね?と仰られます。食べたことないけど臭いと思っている。この先入観が1番のハードルになってるんじゃないかなと思います。
田舎だと、運転していて猪をはねちゃうようなことがあります。その猪を自分たちでさばいてご近所に配ったりすることもしばしばあって。でもどうしても素人仕事なので処理が悪くて臭みが出ちゃって、それを食べた人たちから臭いという話が伝わって、みんなが臭いと思ってしまったようなこともあると思います。
調理方法がわからないとかもあるでしょうね。例えばスーパーで猪や鹿の肉を売っていたとしても、手が伸びるかどうかというと、調理の仕方がわからなければなかなか難しいでしょう。
そしてどうしても鶏肉、豚肉、牛肉よりも価格が高くなりがちですね。ジビエは家畜としているわけでもないし、狩猟や処理に手間やコストがかかる分、どうしても高くなってしまいます。
本当、一般への普及には色々と高いハードルを超えていかないとなぁと、僕自身も僕にできることを一生懸命やっております。オッタントットができる最大の取り組みは美味しいジビエ料理をお客様に食べていただくことですね。ふくおかジビエフェアにも参加していますし、ジビエ料理もいつも以上に力を入れてご提供していますので、ぜひ食べにいらしてください!