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Column

25/1/25

里山サポリの城戸くんはアグレッシブなスーパー農家さん!

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オッタントットがお世話になっている農家さんや食材について紹介するシリーズ、今回は福岡県糟屋郡久山町の農家さん、里山サポリの城戸勇也くんについてお話していきたいと思っています。


彼が配達に来るたびに色々話を聞かせてもらうんですけど、かなり広い視点を持って農業ビジネスをやってるんですよね。僕も刺激をもらっていますし、そんじょそこらの農家じゃねえぜっていうのは僕が保証するところであります。


里山サポリInstagram

https://www.instagram.com/satoyama_sapori



名店の料理人から農家に!

 

城戸くんの年は僕よりちょっと下くらいで、海外の星付きレストランで働いた経験なども豊富な方です。


薬院にピッツェリア・ダ・ガエターノという、世界のピッツェリアベスト70やミシュランビブグルマンにも選ばれている名店があるのですが、彼はそこの立ち上げメンバーとして活躍していました。


働く中で、海外で使っていたような美味しいイタリア野菜がなかなか手に入らないなと感じ、自分で野菜を作る農業をやろうと志します。


農業に関しては完全に素人で、まずは休日に地元の久山町で家庭菜園から始めたそうです。久山町はオッタントットがある篠栗町の隣りです。福岡都市圏に近い場所でありながら、自然豊かで水がとても綺麗で農業に適した環境というのが決め手でした。


飲食店時代の繋がりでレストランに直接野菜を卸して販路を拡大していき、今では100種類以上の野菜を生産されています。少量多品種生産でお客さんに次から次へと提案できる、八百屋のような農家でありたいと言っておりました。


オッタントットも小規模なお店なので、1つの野菜を大量にというよりは、色々な種類が欲しいんですよね。単一生産の農家さんへ種類ごとにお願いして仕入れるのは大変なのですごく助かりますし、彼の考え方とマッチしています。




キッチンカー「サポリカー」

 

城戸くんは農業を始めた数年後、サポリカーという常設キッチンカーをオープンさせます。野菜を使ったピザやジェラートを伊野天照皇大神宮という神社の駐車場で販売するものです。


元々キッチンカーでイベント出店をされていて、常設を考えた際、福岡市東区の金印ドックとか、唐津市のからつバーガーとか、自然豊かな場所にあるキッチンカーをイメージされたそうです。


普通の飲食店ならちょっと出せないなっていう場所でも、キッチンカーは出す料理もけっこうシンプルで、手で持って食べられるものとかが多いので成り立っちゃうんですよね。


その神社の駐車場に常設することにした理由がまた面白いんです。神社前の道は渋滞がひどくて、特に夏場は川遊びのファミリーなども増えるので大渋滞しています。近隣の方がわざわざ山越えのような遠回りをされているくらいなんです。


なんと城戸くんは、この渋滞を緩和させるために、キッチンカーの収益で交通警備員を雇うから常設出店させて欲しいと神社の総代会にプレゼンしたんです!


通常は自社の収益も考えるし、キッチンカーの制作にもお金がかかる。それでも地域の利益のために動くのがすごいです。神社の駐車場に出すものなので、キッチンカーのデザインも営利的なものを極力排除して、神社に馴染むものにしている気配りも素晴らしいなぁと。


現在は基本土日のみの営業で、月によっては平日の営業もされています。


サポリカーInstagram

https://www.instagram.com/sapori_car/



朝食イタリアン「キッキリッキー」

 

さらにアグレッシブな城戸くんはキッキリッキーという朝食イタリアン専門店も始めます。店名の由来はニワトリの鳴き声。日本ではコケコッコーですが、イタリアではキッキリッキーなんです。朝早くにニワトリの鳴き声で目覚めるようなイメージですね。


元々朝食を食べに行くのが好きで、朝だけの営業なら昼から畑作業もできるという考え。理に叶ってはいますが、かなりハードで普通はなかなかできないことですよね。


朝は城戸くんがキッキリッキーを営業して、昼はお蕎麦屋さんが営業するという形態になっています。完全予約制の7時、8時、9時の3部制で、1.5時間の朝食コース(2,200~2,400円)が提供されています。


数年後には農家が出す朝食の価値をわかってもらえる時がくる、と先を見据えられています。確かに、堀江貴文さんも朝食の外食をおすすめしているし、鮮魚市場の朝食も人気ですよね。


行けるところに地元の食材を使った朝食があったら、行ってみたいと思うのは割と自然だなぁと。この先どれぐらいの価値を持つかは僕にはちょっと見えないですが、すごくいいなと思っています。


福岡発で全国的にも有名になっているうどん屋さんから言われた、「もう3年くらい、みんながわからないことをやっていくのがいいよ」という言葉が残っているそうです。だから僕やみんなの理解がまだ追い付かないようなことも、きっと城戸くんは「わかる時が必ずくる」と信じて今後も臆せず実行していくことでしょう。


キッキリッキーInstagram

https://www.instagram.com/chicchirichi_hisayama/



循環型農業で付加価値を

 

オーガニック野菜も西洋野菜もすでにやってる人がたくさんいるわけで、付加価値をつけなければと城戸くんが実践してきたのが循環型農業。


例えば、野菜を育てる堆肥は自家製です。茅乃舎のだしって全国的にも有名なのでご存じの方も多いと思います。それの母体の久原本家という会社が近くにあり、鰹だしをとった後の鰹節なんかの廃棄物を譲り受けて、自店で出る廃棄物も合わせて堆肥にしています。


最初は少しずつ始めていった堆肥作りも、今では畑で使う堆肥をすべて自家製でまかなう規模になっていて、完全に循環型農業になっています。


彼の畑で堆肥作りを見てすごいなと思ったこともあって、オッタントットでも段ボールコンポストという堆肥作りキットを導入しています。お店で出た生ごみを堆肥にして、僕の父がやっている畑に使っている循環型飲食店です(笑)。




地酒作り「our sakeプロジェクト」

 

久山町の猪野地区は水質の良さと水量が豊かで米作りにも適した土地で、美味しいお米が作られています。城戸くんは酒米を作っていて、この地酒プロジェクトが始まった経緯がまた面白いんです。


地元の仲間たちと週1回、焚き火をしながら地元活性のために色んなことを話そうという焚火會での会話が発端でした。久山町は米作りに適しているけれど、お米そのものはマネタイズが難しいし、お米の価値をもっと上げて久山町の発展を目指したい。


久山町でみんなが楽しめるコンテンツやスポットがあったらいいよね。そして宿泊までしてもらいたい。だったら飲食店や宿泊施設で地元のお酒があったら良くない?久山町のお米で地酒作ろうぜ!となったそうなんです。


ご飯はみんな食べるものですが、スーパーで比較的安いものを買う方がけっこう多くて、農家から直接買われる方って少ないと思います。


では農家から直接買うのはどういう方なのかというと、やっぱり食べるものにちょっとこだわりたくて、多少高くても自分の中で納得感のあるものを買いたいっていう方ですよね。


そういう方たちにはお米自体はリーチしているけれど、それ以外の方には久山町のお米の美味しさが伝わっていかないわけで。お酒だったら飲むよっていう人がいるはずで、そういう、お米だけではリーチできないところにお酒だったら届くんじゃないかと僕も思います。ふるさと納税でも出せますから、県外の方にもリーチできますしね。


これに関しても、城戸くんは自分が儲けようみたいなところがなくて。地酒プロジェクトで利益が出たら、さくら山という普段着で気軽に登れる山にフォトスポットを作ってSNSを使っている若い層を誘致しようとか。


猪野川は桜の時期や川遊びの時期は人が集まるけど、それでもまだ誘致としては弱い。ミモザが群生するスポットを作ったら、桜の時期と別の花見のタイミングが作れるんじゃないか。そんな、地域のためのことをいつも考えている人です。


our sakeプロジェクト公式ページ https://ourhisayama.com/oursake/




構想と展望が止まらない

 

城戸くんは留まることを知りません。新たに土地を買って貸し農園を作り、多くの人がそこに集って農業を楽しみ、そこに今やっているお店を移転して里山サポリの村のような構想を立てています。


この「村」というキーワード、前に紹介した野上ファームの野上くんも違ったスタイルで似たようなことを言っていて胸熱です。形は違えど、何かしらそういうコミュニティを作ろうとしているんだなというのを感じています。僕自身もコミュニティというものにすごく魅力を感じていますし、時代的にすごく重視されてきているのかなと思います。


パン屋さんを作りたいとも言っていて。これがまた変態農家あるあるなんですけど、パン屋を作りたいからまず小麦作ろうって、どこまでやるんだって本当に恐ろしい男です。


あと彼が言うには、これからはカット野菜や惣菜の時代だと。これは僕もすごく分かります。みんな忙しくなってきてて、料理をする時間が取れなくなってきてるんですね。


カット野菜や惣菜の問題点があるとしたら、どこの誰が作った野菜かわからないところ。だから、「里山サポリのカット野菜」のように生産者がわかるものだったら、食の安全性を求めつつ楽をするという需要があるんじゃないかと。


そういう可能性を見ている、そこにたどり着く思考の深さが彼のすごいところだなと思います。ビジネスマンなんだけど、お金を稼ぐのが上手とかそういうことではなくて、どっちかと言うと彼は下手かもしれない。


お金儲けしたいとかそういうことではなくて、やっぱりなんか面白いことやりたいとか、そっちの方に振ってるんですよね。だからちょっと小銭ができてもすぐ新しい事業に投資してしまうので、貯蓄とかは全然持ってないと思います(笑)。


ただ僕はこういう人たちをすごく応援したくて、取引をさせてもらってオッタントットを営んでいます。すでに結果を出されていますし、売れていますし、尊敬しています。お前もそういう風になれよって自分に言い聞かせながら、僕は僕でやれることを日々やって頑張っていきたいと思っております。



このコラムの参考にさせていただいた、伊藤総研さんが城戸くんにインタビューしたnote記事


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