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26/9/28

ジビエって臭い?鹿・猪の魅力とオッタントットで味わうジビエ料理

目次

鹿と猪ってどんな味?それぞれの肉の特徴

「ジビエって臭いんでしょ?」いや、臭くないです!

オッタントットのジビエはどこから来る?

オッタントットで味わう鹿と猪の美味しさ

ジビエ初心者にはボロネーゼがおすすめ

猪は秋から冬、鹿は夏。ジビエにも旬がある

鹿・猪・牛・豚を成分で比べてみる

中世ヨーロッパから続くジビエ文化

日本ではジビエをどう扱っているのか

ジビエは怖くない!まずは一度食べてみてほしい


この記事を音声で聞くには ▶ をクリック


今回はジビエのお話です。ジビエという言葉は、聞いたことがある方も多いですよね。なんとなく「鹿とか猪とか、そういう肉のことでしょ?」というイメージだと思うんですが、だいたいそんな感じです。


ジビエはフランス語で、ざっくり言えば狩猟によって食用に捕獲された野生動物のこと。鹿や猪だけではなく、鴨、キジ、ヤマバト、ウサギ、アライグマ、アナグマ、熊、タヌキなんかも含まれます。


オッタントットでは、鹿や猪などのジビエのほか、鴨や羊などさまざまな肉料理を提供しています。


以前もちょっと話したことがあるかもしれませんが、改めて。聞いたことがある方は復習という感じで、初めての方は「ジビエってこういうものなんだな」くらいに気軽に読んでもらえればと思います。


こちら↓のコラムも併せてご覧いただくことをおすすめします。



鹿と猪ってどんな味?それぞれの肉の特徴

今回は鹿と猪について深掘りしてみます。実際、鹿や猪ってどんな肉なの?というところからいきますね。


鹿肉は、とにかく赤身です。和牛みたいに身の中にサシが入っている鹿を僕はほとんど見たことがありません。


赤身が特徴の鹿肉

皮膚の下に皮下脂肪がついていることはありますが、肉の中はかなりあっさりしています。ただ、あっさりしているのに旨味がすごく強い。まさに赤身の肉という感じです。


和牛の美味しさって、特に日本ではサシの入った脂の濃厚な旨味が大きいと思います。鹿にはそういう脂の旨味は少ないですが、赤身そのものの旨味が強い。


そして鉄分が多いので、人によっては少し血っぽいというか、ミネラルっぽい風味を感じるかもしれません。


猪は豚と比較されることが多いです。豚はもともと猪を家畜化したものなので近いのは当然なんですが、一番違いを感じるのは脂ですね。


赤身と脂身が特徴の猪肉

猪の脂には甘みがあって、食感もちょっとサクサクしてる感じがあります。「脂がサクサクってなんだよ」と思うでしょうけど、なんかサクサクしてるんですよね(笑)。しかも豚みたいに脂っぽく感じにくくて、本当に上品です。


信じられますか、あの猪ですよ。見た目はあんな感じなのに、肉はめちゃくちゃ上品。



「ジビエって臭いんでしょ?」いや、臭くないです!

ここは今回一番伝えたいところですね。ジビエって臭いと思ってませんか?結論から言います。


臭くないです。全然臭くない。


僕は猪を食べ慣れてくると、もはや豚の方が臭いなと思うことがあります。猪を食べ慣れすぎると、豚を食べるのが嫌になる…まではいかないかもしれませんけど、それくらい癖がなくて上品です。


一方で鹿には、鹿特有の香りがあります。これは「臭み」とはまた違うと思うんですよね。鶏肉には鶏肉の香り、牛肉には牛肉の香り、豚肉には豚肉の香りがある。それと同じように、鹿には鹿の香りがあるという感じです。


ただし、これは処理の仕方や処理までのスピードがものすごく関係しています。猟師さんの中には「処理で味の8割が決まる」という方もいるくらいです。


まず重要なのが「止め刺し」と呼ばれる作業です。例えば罠にかかった鹿や猪を見つけたら、ハンターが近づいていきます。ちょっと残酷に聞こえるかもしれませんが、鉄パイプのようなもので頭を叩いて失神させ、その間に首の大きな血管をナイフで切って血を抜くような方法が一例です。


箱罠で捕獲された猪

オッタントットがジビエを仕入れているトラックスの林くんも、Instagramで実際の作業を動画で紹介しています。罠にかかった鹿や猪を失神させて、首を切って放血するところまで出しているので、苦手な方は見られないかもしれません。


でも、それはそれで命をいただくということも含めて勉強になるなと思います。


そして内臓摘出。これもスピードが大事です。内臓には、鹿や猪が食べたものが残っていますし、細菌なんかもあります。温かい状態のまま置いていると菌が繁殖して匂いが出て、それが肉に移ってしまうことがあります。


普通に衛生面でも危険なので、内臓はできるだけ早く摘出する。これもすごく重要です。


ストレスも肉質に影響すると言われています。罠にかかった鹿や猪は、当然逃げようとして暴れます。中には足を引きちぎってでも逃げようとする個体もいるそうです。暴れるとアドレナリンなどが大量に出て、それが肉質の低下につながると言われます。なので、なるべくストレスをかけないことも大事。


さらに、発情期のオスは独特の匂いを出す場合があって、それが肉の匂いにつながることもあるそうです。


もう一つ大事なのが、いかに早く冷やすか。


体温が高いまま置いていると脂が酸化して独特の匂いが出てきます。なので処理後は速やかに冷蔵庫などで冷やして保管します。


こういう処理をきちんとやっているジビエは、本当に臭くないです。



オッタントットのジビエはどこから来る?

オッタントットでは大分県日田市や福岡県糸島市の鹿や猪を提供しています。基本的には常時出せるように準備していますが、タイミングによってはなくなってしまうこともあります。


日田市の方は株式会社tracks、糸島市の方は株式会社糸島ジビエ研究所から仕入れています。どちらも処理場を持っていて、正規のルートで仕入れています。




なんで大分から仕入れているのかという話なんですが、トラックス自体は福岡県糸島市の会社です。トラックスに所属している林くんという人が、篠栗町で鹿や猪を捕っていました。なので僕も最初は篠栗産の鹿や猪を使っていたんです。


ところが林くんが大分県日田市へ異動することになり。そこで「じゃあ仕入れやめます」とはならずに、「林くんから買うよ」ということで、そのままお願いして日田産に切り替わりました。


オッタントットではよく「誰から買うか」みたいな話をしますが、これも同じですね。彼も今後また動きがありそうなので、この先どうなるかはまだ分かりませんが、今のところはそんな感じです。


もう一つの糸島ジビエ研究所は、福岡県がやっている福岡ジビエフェアでご一緒しているところです。僕もここ数年ずっと福岡ジビエフェアに参加していて、糸島ジビエ研究所がその旗振り役になっていることもあり、そういうご縁で時々仕入れています。



オッタントットで味わう鹿と猪の美味しさ

オッタントットでは、鹿も猪も基本的には塊肉を低温ローストしています。低温調理器で52℃くらいまで中心温度を上げていきます。


この時点ではまだ加熱として不十分なので、そこからキンキンに熱したフライパンで表面にしっかり焼き色をつけます。いつも言っているメイラード反応ですね。


全部の面を焼いてからアルミホイルで包み、コンロの端など温度の高いところで15分くらい休ませます。その間に中心温度をさらに上げていく。こうすることで硬くなりすぎずに火を入れつつ、肉を落ち着かせます。


熱々の肉をすぐ切ると、肉汁がバーッと出てきますよね。テレビなんかでは「肉汁すごい!美味しそう!」って言ったりしますけど、あれ、要は旨味のある水分が外に出ちゃってるだけですからね。見た目的にもあんまり良くない。


肉を休ませることで、それをある程度防ぐことができます。とはいえ、毎回100%完璧にいくわけではありません。「もうちょっと寝かせたかったな」と思うこともありますし、営業中なので時間にも限界がある。そのへんは僕も、もっと上手くできればいいなと思っています。


オッタントットで提供している鹿ロースと猪モモの食べ比べ

こちらは鹿ロースと猪モモの食べ比べ。ジビエの美味しさをストレートに感じられる一皿です。


  • 鹿肉のハンバーグ
  • 猪の骨付きバラ肉のグリル

鹿肉のハンバーグや猪の骨付きバラ肉のグリルがメニューに登場する時もあります。


猪はバーベキューでもすごく美味しいです。薄切りにして、脂身のついたところを炭火で焼く。これはめちゃくちゃおすすめで、塩とオリーブオイルくらいのシンプルな食べ方が美味しい。


ソースをつけるなら、スペインのロメスコソースみたいな、トマトやパプリカを使った少しスパイシーなソースも合うと思います。猪のタコスとかも美味しそうですね。


逆に鹿は、薄切りを炭火で焼く方法はあまり向かないかなと思います。脂が少ないので網にもくっつきやすいし、火を入れすぎると硬くなります。フライパンで強火でサッと焼き付ける方がまだ合うかもしれません。


鹿は赤ワインソースや、醤油ベースのシャリアピンソースなんかが合うと思います。焼肉のタレもたぶん合います。あんまりやらないけど(笑)。


もしスーパーで鹿肉や猪肉が普通に売っていたら、薄切りにしてバーベキューしたり、家のフライパンで焼いたりもできますよね。


せっかくオッタントットに食べに来てもらうので、僕としては塊のお肉を低温ローストして、柔らかさとか、肉そのものの香りを楽しんでもらいたいなと思っています。



ジビエ初心者にはボロネーゼがおすすめ

とはいえ、「いやいや、やっぱりいきなり鹿とか猪の塊肉は怖いよ」という方もいると思います。そんな方におすすめしているのが、ジビエのボロネーゼです。いわゆるミートソースのパスタですね。


オッタントットのボロネーゼは、鹿肉と猪肉のミンチを完全に半々で使っています。


オッタントットで提供している鹿肉と猪肉を使ったジビエボロネーゼ

一般的なボロネーゼは赤ワインで煮込むレシピが多いと思うんですが、僕は白ワインで煮込んでいます。その方が肉の味がストレートに感じられるなと思うんですよね。


伝統的な調理法って、肉の臭みを消す目的で使われていることもあります。でも、そもそも肉が臭くないなら、それは別に必要ない。省けるものは省くし、「こっちの方がいいんじゃない?」と思えば変える。その辺はいつも意識してやっています。


白ワインで煮込んだ後にホールトマトを入れて、トマトでさらに煮込んでいます。あっさりしているけど、肉の旨味はストレートに感じられるボロネーゼです。


実際に食べてもらうと、「ジビエって分からないくらい美味しい」「全然臭くない」って驚かれることが多いです。いや、ジビエって分かって注文してるんですけどね(笑)。


「ジビエっぽくない」と言われるんですが、僕からすると、もともとちゃんと処理された鹿や猪ってこういう肉なんですよという感じです。


なのでジビエ初心者の方は、まずボロネーゼから始めてもらうのもいいと思います。



猪は秋から冬、鹿は夏。ジビエにも旬がある

鹿にも猪にも旬があります。野生動物なので、その時期に何を食べているか、どれくらい脂肪を蓄えているかで肉質が変わるんですよね。


猪は一般的に秋から冬が旬と言われています。


森を歩く野生の猪

猪は雑食ですが、基本的には植物を中心に食べています。どんぐり、たけのこ、芋類、柿、栗、稲、クズの根なんかですね。ミミズなどの虫を食べることもあります。中でも、どんぐりを食べた猪は美味しいと言われるそうです。


これ、イベリコ豚に似てるなと思ったんですよね。スペインのイベリコ豚にもランクがあって、その中でもベジョータと呼ばれるものは、どんぐりを食べて放牧されています。


猪と豚ってそもそもルーツが一緒で、猪を家畜向けに品種改良したのが豚という感じですよね。だから、どんぐりを食べた猪とイベリコ豚に共通する部分があるのも面白いなと。


秋になると木の実がたくさんできて、猪はそれをいっぱい食べて脂肪を蓄えます。餌が少なくなる冬に備えるので、秋あたりが一番太っているということですね。


12月から2月くらいになると発情期を迎えて、特にオスは行動範囲がかなり広くなるそうです。メスを探して移動することの方が重要になって、食べることがおろそかになる。そうするとだんだん脂が落ちていきます。


さらに発情期には、いわゆるフェロモンのような独特の匂いを発することがあって、それが肉の臭みに影響することもあると言われています。


それに対して鹿の旬は夏と言われています。


森に立つ野生の鹿

鹿が食べるのは、基本的には柔らかい木の新芽や葉っぱ。春にたくさん食べて太り、その状態で夏を迎えるので、夏鹿は美味しいと言われます。


秋になると発情期を迎えて、その後、特にメスは出産などもあって痩せることがあると言われています。


ただ、鹿は葉っぱだけではなくどんぐりなんかも食べるので、秋にも食べるものはあります。猪みたいに極端に痩せることは少なく、通年を通してある程度一定の品質を保ちやすいとも言われます。


とはいえ、結局めちゃくちゃ個体差があります。秋だろうが夏だろうが太るやつは太るし、太らないやつは太らない。身が硬いやつは硬い。


なのであくまで一般的な話ですが、「猪は秋から冬、鹿は夏」くらいに覚えてもらえればいいかなと思います。



鹿・猪・牛・豚を成分で比べてみる

文部科学省の食品成分データベースで、鹿肉、猪肉、牛肉、豚肉を比較したデータも見てみました。


比較されているのは可食部100gあたりで、


  • ニホンジカの赤肉

  • 猪の脂身付き肉

  • 和牛もも肉・脂身付き

  • 豚もも肉・脂身付き


です。


ただ、これ、鹿だけ赤身だったり、猪は部位がよく分からなかったりするので、完全に同じ条件での比較ではないんですよね。そこはちょっと微妙なんですが、数字を見てみます。


エネルギー

鹿肉 107kcal

猪肉 249kcal

和牛もも 235kcal

豚もも 171kcal


タンパク質

鹿肉 22.6g

猪肉 18.8g

和牛もも 19.2g

豚もも 20.5g


脂質

鹿肉 2.5g

猪肉 19.8g

和牛もも 18.7g

豚もも 10.2g


鉄分

鹿肉 3.9mg

猪肉 2.5mg

和牛もも 2.5mg

豚もも 0.7mg


こうして見ると鹿肉は低カロリー、高タンパク、低脂質、高鉄分。なんか健康に良さそうな感じがしますよね。


鹿にしろ猪にしろ、野生で動き回っている動物なので、家畜として育てられている牛や豚とはやっぱり違うんだろうなと思います。



中世ヨーロッパから続くジビエ文化

ジビエの歴史をたどっていくと、中世ヨーロッパくらいまで遡ります。当時、狩猟は庶民にとっては食料調達でしたが、貴族は狩猟を食料源だけでなくスポーツ・娯楽・宮廷文化として発展させ、一部の獲物や狩猟地には特権もありました。


軍事訓練のような意味もあったのではないかと言われています。鉄砲を撃ったり、山に入ったりしますからね。それなりに危険も伴います。


王様や貴族は広大な土地を持っているので、自分の森の中に入って鹿やウサギ、キジ、ヤマバトなんかを獲る。猟犬を連れていったり、鷹狩りをしたりですね。


中世ヨーロッパの王侯貴族による狩猟の様子

そして獲ってきた動物を屋敷に持ち帰って、宴会で振る舞う。「俺はこんな鹿を獲ったぞ!」「ウサギ獲ったぞ!」「キジ獲ったぞ!」みたいな自慢もありつつ、みんなで食べる。そんな文化だったようです。


フランスでは、仕留めた動物をすぐ食べるのではなく、数日、長い場合は1ヶ月くらい寝かせてから食べるフザンタージュという方法も一部にあるそうです。「フザン」はキジのことです。


動物には自己消化酵素というものがあって、死んだ後に自分自身の体を分解していく作用があります。これを利用して肉を柔らかくしたり、ジビエらしい野性味のある香りを引き出していく。


魚介類でいうとシャコなんかもそうだったと思うんですが、放っておくと自己消化酵素が働いて身が溶けてしまうようなことがあります。


もうひとつ有名なのがエトフェという処理方法です。ビュルゴー家が伝統的に手掛けるシャラン鴨では、血を抜かず窒息処理する方法が知られています。


普通、動物を食肉にする時は血を抜きますよね。鴨なら首を切って血を抜くような処理をすると思うんですが、エトフェの場合は逆で、血を抜かずに処理します。たしか窒息させるような方法だったと思います。


そうすることによって血が肉に残り、普通の鴨よりも血っぽさというか、赤身感の強い味になるのかなと思います。


調理法というより、処理方法という感じですかね。もちろんみんながやっているわけではなく、一部の方法だと思います。



日本ではジビエをどう扱っているのか

日本では厚生労働省が2014年11月にガイドラインを策定していて、鹿や猪など、狩猟の対象となって食用にされる野生鳥獣やその肉について、大きく5段階の衛生管理が定められています。


  1. 捕獲

  2. 運搬

  3. 食肉処理

  4. 加工・調理・販売

  5. 消費


捕まえる人だけが気をつければいいという話ではなく、運ぶ人も、処理する人も、料理して提供する人も、最終的に食べる人も、それぞれ衛生管理をちゃんとしましょうねということです。


日本でジビエというと、今は地域おこしだったり、獣害対策の一つという文脈で語られることが多いような気がします。


地方に住んでいる方だと「猟友会」という名前を聞いたことがあると思います。狩猟をする人たちの集まりですね。狩猟免許があっても、鉄砲の免許と罠の免許は別なので、猟友会の中にも鉄砲を持っている人と持っていない人がいます。


雪の残る森で狩猟をするハンター

鉄砲を持って猟犬なんかを連れて数人で山に入って、「ようやく1匹獲った!」みたいな狩猟をしている方もいます。ただ、数人で山に入ってやっと1頭というペースでは、猪や鹿の数を減らすという意味ではなかなか難しいという感じでしょうね。



ジビエは怖くない!まずは一度食べてみてほしい

ジビエに対して、「なんか怖い」「臭そう」「癖が強そう」みたいな苦手意識がある方もいると思います。でも全然怖がらなくて大丈夫です。ちゃんと処理された鹿や猪は、本当に臭くないし、美味しいです。


いきなり塊肉はちょっと…という方は、まずジビエのボロネーゼから。それを食べて「美味しいじゃん」と思ったら、次は鹿、猪、それからお店によってはアナグマや熊なんかを使っているところもあります。


いろいろ食べてみると、これまで知らなかった「美味しい!」に出会えると思います。

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