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25/7/28
オッタントットが目指すビストロ像を語ってみます

目次
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今日は改めて自分のことを考え直してみた回です。まだ自問自答しているところではあるんですが、この先自分がどうやっていきたいのか、どうなっていきたいのか、オッタントットをどういう方向に進めたいのか。き ちんと整理していきたいなと思いました。
自分が行きたいお店を作る
やっぱりお店のジャンルとしてはビストロでありたいなと常に思っています。
単なる業態としてのビストロではなく、フランスの食文化としてのビストロであったりとか、ワインや料理も含めて、空気感とか、あとは人と人との交流、こういうのも結構重要で、ビストロってそういう魅力がある場であると考えています。
今ふと思ったのが福岡の屋台文化とかともちょっと似ているのかな。福岡の屋台って地元の人と観光客との出会いの場みたいなところもあって。
どこから来たんですかみたいな話から、出張で行ったことあります?とか、あそこいいっすよねみたいな。他愛もない話ですけど、そういう地元の人との交流も旅行者からしたらすごく貴重な経験であったりするんですよね。
そういう空気感ももちろんそうなんですけど、やっぱりとにかく僕はこの篠栗町で普通にフラッと立ち寄れて、美味しいごはんを食べながらワインを飲むみたいな、自分自身がそういうお店が欲しいなというふうに思ったんです。
あとは例えば友達がどこから来た時や、美味しいワインが飲みたいよねみたいに言ったときに、篠栗にもいいとこあるよ!って連れて行けるようなお店。そういうお店ってあったほうがいいよねっていうか、それって必要だよねって思ったんですよね。
それで「俺、やるしかねえか!」って、それが始めたきっかけみたいなところがあります。
創業からコロナ禍の模索
でも最初は自分がイメージするビストロよりもっとカジュアル、もっと気軽なものをやっていましたね。それは意図してやっていたことなんですけど、とにかく地元の人とかが気軽に立ち寄れるような、来やすいような、そういうお店にしたいなというか、そういうお店であるべきなんじゃないかなというふうに思って。
なので屋号にも「欧風食堂」って、ヨーロッパ系の意味での欧風と、食堂という冠をつけたんですね。
とにかくカジュアルに来てほしいんだっていう意思を示す上で食堂ってつけたというのもあるし、あとは店の場所がもともとやよい食堂っていう食堂があった場所で。僕が子どもの頃まであったのをうっすら覚えていて、食堂という名を引き継いでやっていくのも面白いかなと思ってつけた感じです。
そんなやり方で営業していたんですが、いまいちハマんなかった感じがあるんですよね。なんかこれちょっとうまくいってないなと感じながら過ごした1年間でした。
そして1年経ったらいわゆるコロナ禍がやってきたわけです。緊急事態宣言だったりまん延防止等重点措置がとられて、そこからほぼ2年間、まともに営業できないような難しい時代が続きました。
本当に試行錯誤の日々で、席のレイアウトを感染対策用にやり直してみたり、テイクアウトだけやりますみたいな時期があったり、緊急事態バーガーなんていうハンバーガーを出したりもしましたね。
ハレの日に使われるお店
コロナ禍から2年経って、もう大丈夫じゃね?と、なんとなく社会がそういう雰囲気になってきましたが、すぐさま飲食店の需要が戻ってくるわけでもなくて。その辺はわりと慎重派な日本人と言いますか、特に日常使いのお店はなかなかお客さんが戻ってこなかったような印象があります。
日常使いは確実に減っているなと感じたんですが、いわゆるハレの日、例えば誕生日とか結婚記念日とかお祝いごととか、そういう記念の日にいらしてくださるお客さんが多かったんです。
それでオッタントットはハレの日に使いたいお店なんだということを自覚したんですよね。それからは、日常使いのお店というよりも特別感のあるお店にシフトしていった方がいいんじゃないかと考えるようになりました。
とはいえ、「特別感があるレストラン」って僕はやっぱり柄じゃないんですよね。確かに記念日にはもちろん自分自身行ったりもするし、行きたくなる時もあるんですけど、僕自身がやるってなると、やっぱりそこは柄じゃなかったりするんですよ。
もちろん今フルコースの予約を受けていますし、力を入れて頑張ってやっていますけど、どちらかというとアラカルトで好きなもの食べたいものを選んでもらって、これが食べたいっていうリクエストを受けて作るみたいな方が好きだったりします。
そういうのもあって、やっぱり「レストラン」でもないんだよなと。日常である家庭と非日常であるレストラン、この間にあるようなことをしたいと思うと「ビストロ」なんですね。
フランス食文化へのリスペクト
ビストロの料理はフランスの豊かな食文化の歴史の中で全然廃れることなく、かなり定番としてずっと受け継がれてきた料理たちなんですよね。それって家庭料理の延長であるっていうことが結構重要なのかなと思っていて。
日本の料理に置き換えると、味噌汁だったり、唐揚げだったり、カレーだったり、とんかつだったり、うどんとかそうめんだったり。そういうどこの家庭でも食べているような料理。
これの延長線上にあるというか、こういう料理の完成度の高いやつみたいなイメージなんです。親しみがあるけどやっぱりこの店で食べた方がうまいみたいな、そういったものがビストロの料理なんじゃないかなと思っています。
オッタントットは7年やってるんですけど、僕はコックコートを一回も着たことがありません。コックコートってもちろんかっこいいし、シェフっぽい感じも出るんですけど、その分お客さんが「ちゃんとしなきゃ」って構えちゃうんじゃないかなと思って。そういうのが嫌で、割とカジュアルにTシャツ着てたりとかします。
僕はフランスに行ったことがないし、ビストロと名のつくお店で修行したこともなくて、正直、フランス文化を肌で感じたことはないんです。
だけどビストロという業態のお店に食べに行くことがすごく好きで、その中でもちゃんとフランスの伝統的なビストロという食文化を日本で再現しているみたいな、そういうお店は特に好きです。
さっき言ったように家庭料理の延長みたいな料理で、飾り気もそんなになくて、食べると本当に美味しくて、本当に何気ないんだけどすごく完成度が高い料理。
僕は一応プロの料理人の端くれではあるので、美味しい中に凄みを感じることがあるんですよね。こんなシンプルな料理がなんでこんなに旨いの?なんでこんなに感動するの?っていう時があるんですよ。
僕が好きなビストロではどの料理を食べてもそうで、神は細部に宿るみたいなことを言いますけど、本当にそこには何とも言えない凄みがあって、僕はそういった料理に憧れがあるんだろうなと思います。
ビストロをやってる人ってフランス現地に足を運んで、そこで食べたり修行したりとかをしてきた人が多くて、料理人の技術や食文化へのリスペクトだったりをすごく感じるんですよね。そういったものに僕は憧れていて、素晴らしいなと。
日本で独自に進化してきたビストロ文化もありますね。中華の料理人さんが中華ビストロみたいな業態でワイン×中華みたいなビストロをやっていたりとか、同じように和食のものがあったり、和洋酒関係なくやっていたり。そういう自由度も好きなんですよね。
なので僕としては、フランスのビストロにリスペクトがあり、憧れがあり、好きなんですけど、実際にその体感というのは現地ではしていなくて、ただ最大限リスペクトはしていて。そして日本の自由さがあるビストロもやっぱり好きで、そういったものも取り入れたいなと。
オッタントットの存在意義
そういう僕がこの篠栗町でやるビストロにはどういう意味があって、何を表現していくんだろう、何を体現していくんだろう、何を主張していくんだろう。そういったことをちょっと考えました。
やっぱり僕がやる意味はこの篠栗町という地元に根差して、基本的に今後、特に料理としてはザ・ビストロに寄せていきたいなと思っています。好きを主張していくということですね。でもこれはスピード感はちょっと緩めに徐々にやっていく感じになるでしょうね。
僕が篠栗町でやる理由って、やっぱり近隣の農家さんたちとのつながりがあるかなと。開業した時からお世話になっている桂川町の野上ファーム、久山町の里山サポリ、ここを中心に今では他の地域にも付き合いのある農家さんや生産者さんがいますし、町内でも同級生が新規就農したりとかしてて。
僕の周りの農業は盛り上がってるんですよ。そういった農家さんたちが作っている生産物とフランスの伝統的な料理をフュージョン(融合)させていく。それが町の人に対しては、食の選択肢を提案していくことになると考えています。

この食の選択肢というのは、創業時にやりたかったことでもあります。居酒屋さんや焼き鳥屋さんばかりがあるような状況で、フラッと立ち寄れるワインが飲める洋食屋さんがなかったんです。
オッタントットが入っているビルも、いついつまでに決まらなければ隣町の居酒屋さんが入るって話だったんですよ。その時に僕が本当に思ったのが、もう居酒屋はいっぱいあるからいいだろうと。
選択肢って、今日居酒屋行く?イタリアン行く?フレンチ行く?とかそういう話だろって思ったんですよ。結果的にイタリ アンとかフレンチとか分けずに欧風食堂という形で始めて、今はビストロに落ち着いているわけなんです。
食以外にも魅力の多い篠栗町
選択肢を増やすことは文化レベルを上げることだと思っています。ワインとか洋食がない町とある町ってやっぱ違うと思うんですよね。
それだけで何が変わるかって、変わらないかもしれないです。だけど、ワイン飲んだことある、洋食食べたことある、っていうその経験自体が、その人の糧にはなると思うんです。小さなことかもしれないですけどね。
地元の人に来てほしい気持ちに全然嘘はないんですけど、町外からもたくさんの人に来てほしいなって思っています。篠栗町っていいところいっぱいありますから。
オッタントット以外でも美味しい飲食店さんがいっぱいありますし、山もある、川もある。観光するにしてもいいところがたくさんあるんですよ。
篠栗八十八箇所やお寺関係もいっぱいあります。寺なんか興味ないよって思うかもしれないけど、行ってみるとやっぱり心が落ち着いたりリラックスできたり。森林セラピーなんてこともやっています。
実際に篠栗町に足を運んでもらいたいです。1度来たらまた来たいなと思ってほしいし、そうやって篠栗町にたくさん人が来ることで、町の人たちも盛り上がりを感じると思います。
他に行きたいところがあって、そのついでにオッタントットに行くでも全然いいし、オッタントットでごはんを食べるついでに篠栗町を色々回ってみようかなでもいいし。どっちでもいいんです。
とにかく篠栗町に足を運んでもらえたら僕はすごく嬉しいし、その上でオッタントットに来てもらえればなおさら嬉しいです。
飲食店というのは目的ではなく一つの手段であって、飲食店を通して何を実現したいのかというと、僕はやっぱり、街の人に貢献する、篠栗町に貢献するということです。
食の選択肢を増やすとさっき話しましたけど、食べることって楽しいよねって思ってほしくて、僕はそこを伝えていきたいのだと思っています。ある意味食育みたいなところがあるのかなと。
オッタントットでは地元農家さんた ちの野菜をどんどん使っていますが、一次産業の農家さんたちってすごく重要なポジションじゃないですか。
地元の農家さんたちはなるべく地元で守っていってほしいなと思います。国の補助とかもあったらあったでいいんですが、より近い距離の人たちで守っていくのが自然な形じゃないかなと。それも飲食店を通してやりたいことの1つですね。